19のままさ/花形新次
 
入院したおふくろを
見舞いに行った
実家から徒歩10分のところにある
大学病院だ
25年ぶりに行った病院の周りは
特に変わってはいなかったが
唯一変わっていたのは
すぐ脇にあった一軒家が
なくなっていたことだ
そしてその一軒家こそ
俺が十代を通して
ずっと思いを寄せた女性の家だった
そこに家さえあれば
何処にいるのか突き止めようと思えば
出来たが(勿論、そんな気持ちの悪いことはしないが)
それも出来なくなった

19歳のとき
共通一次試験の前日
文房具を買いに東急ストアに行った
雪がチラチラ舞う寒い日だった
俺がマークシートに使う鉛筆を選んでいると
2m
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