秘名 降りつもる色/木立 悟
 





空を哭き仰ぐ朝があり
磨く価値もない宝がある
砕象 砕象
底に敷いたもののかたち 


午睡の白は塩の白
窓にたたずむひとりの白
何ものにも染まらぬ花嫁の白
帰るところを忘れた白


虹を横切る雷光が
空に幾つも十字架を描き
光の文字の集まりが
重なりすぎて暗く遠のく


家より大きな土嚢の向こう
鴉の羽毛が指す方へ
家より大きな歩幅で過ぎる
空飛ぶ歩幅で歩きゆく


かたちも色も表情も
次々に変わる幽霊が
名を失くしながら捨てながら
時に降る名を浴びながら飛ぶ


風が 病が
鉄の滑車を廻している
空に貼り付いた
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