壊れる/蜜
林檎を模った硝子細工を
両手で
そぉ っと
包み込む時の
その危うさに
胸が高鳴る
硝子は非常に薄く
一枚向こうに
仄かに伝わる体温
それで曇るほどだ
一層このまま
力を入れるとどうなるだろうか
またこの手を放すと・・・と
一秒後の未来を
簡単に予測できる
言ってはいけない言葉を
あなたにぶつけると
どうなるだろうか
この思いを伝えると
どうなってしまうだろうか
壊れてしまうくらいなら
言葉にしないほうが良いのか
子供が椅子の上に立った瞬間
危ない、と判断して
降りなさい、と言ってしまった
その後の事故を考えてしまって
椅子から転落して
痛みを覚えても良いのだ
それにしても成長するにしたがって
臆病になるばかりだ
硝子細工を眺めるだけで
満足できるなら
もう一度置けば済む話だ
壊れることを恐れて
磨くことすらできないなら
埃をかぶって曇ってゆくだけに収まるのだ
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