ユーラシアの埃壜/ただのみきや
泣きぬらしたガラス
とり乱す樹木
細く引きよせて
下着の中へ誘いこむ
風とむつみ合い
あお向けに沈んでゆく
せせらぎも微かな
時の河底
陰影に食まれながら
缶ビールを開けて
キャロル・キングを聞いていた
はずだった
盲目の画家の中へ迷い込み
青白い耳の咲き乱れる庭を歩く
トウシューズとコンパス
真水もなく南に咲き惚れた想いが
触られることのないまま月蝕を抱き
燃え狂う蛾に囲まれている
誰とでもうちとけ合う俗信の
華やぎが日増しに傾いで
波紋が犬のように薬缶を蹴った
ああ秋の水たまり色をしたおまえの目
万象が高飛び込みを競い
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