殯/凪目
器が落ちる
僕はそいつが割れるのを待っている
あなたは花に怯える、華奢できよらかな芯の、その脆さのために泣く
迫る、離れる
あなたは月に戸惑う、深々と白銀が刺ささるのに、心がくらんで目を伏せる
離れる、迫る
あなたは鳥にうろたえる、背の内で膨らむ虚ろ、翼の錯覚に
すがって、うずくまり
そのまま距離も
速度も見失ったきり
遠くで器が落ち続ける
僕らは死に損なった、それだけのこと
あなたは言う、自分のありかがわからない
なら今、そこにいるのは?
追いつかないんだ 追いつけない
速度は消える
あなたは焦がれ、
無限を恋しがり、
遥かな透明、
蜃気楼を求め、
僕を厭う、
そんなのはかまわない、だけど
こわばりを抱えたままどこへ?
答えは返ってこない
あなたは落下の途中にいる
僕は
砕けた足場で
散り散りになった影を拾い、重力を集める
弔いは続く
いつか器は割れる
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