火炙りの朝/ホロウ・シカエルボク
擦れ合うふたつの金属のような
疫病の女の叫び声が
複雑に入り組んだ路地で反響を繰り返し
縺れ合っては消えていく雨交じりの夜明け前
悪夢から滑落した俺は
自分がまだ生きているのか確かめているところだった
ブレイクビーツな静寂
時間は切り刻まれていて
時計の概念が滑稽なほどだった
視覚や聴覚が何の役にも立たない
そんな世界の中に
存在したことがあるか?
外界と内界の混在、または互換
電話機は最後の案内の為に待機している
窓は絶対的な領域の
具現的なものとして枠に張り付いている
一番近くで聞こえる
呼吸すら歪んでいる
これは現実ではない、日常がそうだと
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)