プラハ/
藤原絵理子
城の広場の片隅で
なすすべもなくヴァイオリンを弾いている
餌をくれるんじゃないかと
鳩だけが集まってくる
老人は長年勤めた役所から自由になった
巨大な甲虫は目立たぬよう息を潜めて
いつか脚を広げて飛びたてる日を
古びたホスポダで飲む一杯のピヴォだけを生きがいに
トラムのレールを戦車が踏みつけた
嫌な匂いの煙が漂う街は
少年の頃の祭りにも似て
小さい女の子が
遠慮がちに置かれたケースに
握り締めた20コルナのコインを落とす
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