帰りたい/藤原絵理子
 
帰らなきゃ
ずいぶん長い間歩き続けて
いくつもの分かれ道を
悩みながら選んで来たけど


ここには何もない
帰らなきゃ…どこへ?


分かれ道で選んだのは
安直なリスク回避をしただけのことで
目の前に現れる岩を避けながら
川に流されていただけと知る


それでも年を経れば
陽だまりの老婆になって 微笑みながら
行く雲を眺めていられると思っていた


海へ出て跡形もなく
それを運んだ水は雲を結んで
ふたたび山に帰るけれど 
あたしにはもう帰る場所はない

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