彼女の明るさ/末下りょう
 
ユーモアは悲しみから生まれると、マーク トウェインは書いたけれど、
彼女の明るさも悲しみから生まれてくるものだろうと彼はなんとなく思った。
夏の遊戯のようにとてもユーモラスに。なんとなく。

誰もいない給湯室や、喫煙所に一人でいるときも彼女はその明るさを消すことはなかった。
まるで明るい部屋で延々と眠っているように。
彼女は特別美人という訳ではないけれど、いつも笑顔を絶やさず、誰からも好かれていて、取引先からも人気があった。

彼はそんな彼女を気まぐれな会話の流れのなかで、でもそれなりに抜け目なくタイミングを見計らって食事に誘った。
彼は初めてデートする相手とは肉を食らいに行くと
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