恋の病/おろはげめがね
 
あの日の私に出会いたいです

あの頃

夏が来る前の

雨の日の石の匂いが私好きでした

さみだれて

地面から立ち上る

美しい予感のする何かに

失った恋の数だけ

涙で湿り気を帯びた時刻

私、五月の雨に濡れた石の匂いが大好きでした

あなたもきっと好きだと言ってくれたと思います

私、死んだんです

大きくて
黒くて
ちょっと温かくて
そして
獣の匂いのする
夕暮れの
影に
私連れていかれました

その日の黄昏時は硝子の様で

ガラス越しに見えた世界は

とてもきれいで

きれいすぎて

腹が立つくらいで


人を好きになるのはとてもつらいこと

本当は

いなくなってしまった者たちとの

守れなかった約束

私、死んだんです

鈍色の心

あかがねの空

もう来ないあなたを待つ私

私を待ちぶせるあなた

人殺しの恋

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