詩の日めくり 二〇一七年二月一日─三十一日/田中宏輔
たので、お願いしたら、大学時代の先輩のように、野菜を入れてタレを入れて砂糖を入れて、さいごに肉を入れたのだった。ぼくと森澤くんは、仲居のおばさんが野菜を手にした瞬間に目を見合わせたのだけれど、抗議する暇もなく、つぎつぎと関東風のつくり方を繰り出す仲居のおばさんのすき焼きのつくり方に目をうばわれた、つうか、あきれて、ふたりとも、口をぽかんと開けて、すき焼きが出来上がるのを待ったのだった。キムラは靴脱で靴を脱いで座敷に上がるスタイルの店で、メニューの横に、「関西風」のすき焼きのつくり方が写真付きのものが置いてあったのにもかかわらずだ。あとで、仲居のおばさんがぼくらの席から離れた瞬間に、ぼくは森澤くんの
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