原と道(すぎゆくひと)/
木立 悟
揺らす
空をゆくこがねに照り返し
午後はあたたかく分かれゆく
ひとつを受けとり
ひとつをのがし
わずかな水紋のからだを見つめ
風になびく原に招かれ
川は緑にそよいでいる
水の向こうに結ばれる
音のかけらを鳥たちは見る
声に小さな水を持つひと
歌と曇に染まる指で
川のかたちを描きながら
ひとつの花のはじまりとして
原のほうへとすぎてゆくとき
道のほうへとすぎるわたしの
ひとつの背中に羽を吹きかけ
ひとつの歌をまたたかせてゆく
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