原と道(すぎゆくひと)/木立 悟
 
揺らす


空をゆくこがねに照り返し
午後はあたたかく分かれゆく
ひとつを受けとり
ひとつをのがし
わずかな水紋のからだを見つめ
風になびく原に招かれ
川は緑にそよいでいる


水の向こうに結ばれる
音のかけらを鳥たちは見る
声に小さな水を持つひと
歌と曇に染まる指で
川のかたちを描きながら
ひとつの花のはじまりとして
原のほうへとすぎてゆくとき
道のほうへとすぎるわたしの
ひとつの背中に羽を吹きかけ
ひとつの歌をまたたかせてゆく







戻る   Point(5)