夜明け前に/たもつ
夕焼けの頃)
机の上、広口ビンの透明な壁面には
「真空」と書かれている
私はただ、じっとそのビンを見つめているだけだった
あなたはそんな私を若かったのだと笑うだろうか
あるいは、何も知らなかったのだ、と
あの頃、確かに私は若く、
何も知らなくて
ただ、じっとそのビンを見つめ続けているだけだった
「ほんとうのそら」は
「ほんとうのゆうやけ」に
染まると疑うこともなく
夜は始まる)
あなたとの口づけは
寝台列車の味がした
このまま、どこに行くのだろう
そして、あるいは
どこに行かないのだろう
そんなことをどこか遠いところで
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