すすき野原で見た狐/板谷みきょう
 
を結んではくれないのだ。」その訳は、与一自身もわかりませんでした。
「のォ、与一よ。お前さんが言うとったジャガタラというモンは、いつ実ってくれるんじゃろうのォ…。」
 見るからに肩を落とす与一に向かって、村の意地悪な者は、そう言っては与一をからかい、笑い者にしておりました。

与一は、そんな言葉に逆らう様に、一人黙々と、朝起きては、畑で草を刈ったり水を撒いたりと、ジャガタラの世話を続け、それが終わると村のあちこちを歩き回りました。
そうして村人を見付けては、声をかけ、訳の分からない神様やら仏様やらの話をしておりました。
 「人一人が、両の手を合わせて、思案しても、天に願ってみても、それ
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