すすき野原で見た狐/板谷みきょう
 

 「与一は旅の途中で気がふれてしまったに違いない。考えてみれば、ふた親を亡くしてしまった不憫な男だったじゃないか。結局、帰るあてもなく、この故郷の村に、帰って来たに違いあるまい。なぁ。皆、どうじゃ。どうせ、お互いに食えない者同士じゃて。わしらが、この男の面倒を、見てやろうじゃないか。」
 その一言で彼は、また再び、この貧しい村に、住み込む様になった。
もともと有ったお稲荷様の社の中は、今では、荷車から降ろされた十字架やマリア観音や仏像、観音像、神棚や曼陀羅図などが、所狭ましと置かれ、祀られる様になっていた。与一は、社のまわりの畑作りを始めると、早速、ジャガタラの種を植え始めました。

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