すすき野原で見た狐/板谷みきょう
る事が無くなるはずなんだ。どうやって食べるかは、わしが知ってる。本当だ……みんな。本当なんだ……。」
しかし、村の年寄り達は、村を捨て去って行った与一の帰郷に戸惑いを隠せませんでした。
誰も端から疑い、この男の話を信じる者は居ませんでした。
夢の様な事を目の前で話している男は、確かにかつて生まれ育ったこの村を、捨てて逃げて行った男の一人なのですから……。
それに、荷車に積まれた山の様な荷物といえば、何の役にも立たないガラクタの様な物と、男がジャガタラと呼ぶ到底、腹の足しにはなりそうもない訳の分からない物だったのです。
しかし、その時、村の長がそっと村の年寄り達に、ささやき諭した。
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