詩の日めくり 二〇一六年十三月一日─三十一日/田中宏輔
 
ないのも
美しいと思った。
じっと傷口を眺めていると
彼は指を隠した。
自分から見せたくせにね。
胃や腸がない子っているのかな。
内臓がそっくりない子。
そんな子は内面から美しくて
きっと、全身が金色に光り輝いてるんだろね。
脳味噌がない子もすてきだけど
目や耳や口のない子もかわいらしい。
でも、やっぱり
手足のない子が、いちばんかわいらしいと思う。
江戸川乱歩の『芋虫』とか
ドルトン・トランボの『ジョニーは戦場に行った』とか
山上たつひこの『光る風』とか
手足のない青年が出てきて
とってもキッチュ・キッチュだった。
あ、日活
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