「ひろしま」/do_pi_can
 

「みんな,名前があったけんね」
「人の数だけ,あったけんね」
「名前の数だけ,生活があって」
「生活の数だけ,うれしいことや,かなしことが,あったけんね」

老婆は,
立ち上がり,
雨に打たれている

雨の中で
小さくなっていく

「みんな,名前を持っとった」
「みんな」

「みんな」

いつしか
老婆の姿は無い

私の口から
名前がこぼれる

雨が
まぶたを
つたう



   徹君
    あきさん
   博ちゃん
    庸子さん
    花枝ちゃん
    洋平君
    トメさん



昨日の町の姿が
積み重なった沢山の名前の中から
浮き上がってくる

町が




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