「ひろしま」/do_pi_can
 
    清喜君
    君子ちゃん
    よねさん



祭りで賑わう商店街のはずれに
小さなお地蔵様があった
その脇の雨に濡れない場所にベンチがあったので
そこに座って冷え切ったたこ焼きを食べることにした

ビルの谷間の
小さな空間

「ここは,空き地のあった場所」
しわがれた声で女性が言う

「何か思い出したんですね」

横を見ると,女性は
老婆に変わっている

「お地蔵様の前の空き地は
子供たちの遊び場でした」
「お互いに名前を呼びあいながら遊んでました」

口の中に残ったたこ焼きの滓を飛ばしながら
「それが,この町の昨日の姿でし
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