蜃気楼に傷口/ホロウ・シカエルボク
時の流れに飲み込まれていく生命の波動をこぼすまいともがき、足掻き、意味の判らぬ声を発する、その刹那、常識と限界を飛び越えた者だけが新しい詩を得るだろう、漆黒の闇の中でも、微かな火種さえあれば光は生まれる、刃となって空間を真っ二つにする、慰めや安心の為の言葉になどなんの意味もない、不安や怖れの中で目を見開いてこそ本当の言葉は生まれる、睡魔に負けそうなら薄皮を切り破り己が血を啜ればいい、痛みと緩やかな背徳の中で命は渦巻き、向かうべき場所へと疾走を始めるだろう、たったひとつの、確かな言葉の為にどれほどの人間が人生を棒に振るのだろう、砂から金を作り出す術を信じてしまったみたいに目を血走らせて、書き留め
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