詩の日めくり 二〇一六年十二月一日─三十一日/田中宏輔
 

「はい、不安です。」
職員のひとが、ぼくに、こう訊いてきた。
「不安か?」
ぼくは、その職員のひとに、こう答えた。
「はい、不安です。」
職員のひとが、ぼくに、こう訊いてきた。
「不安か?」
ぼくは、その職員のひとに、こう答えた。
「はい、不安です。」
繰り返し、何度も同じやり取りをしているうちに
とうとうぼくは、朝に食べたものを、ぜんぶ吐いてしまった。
職員のひとが、ぼくの顔も見ずに、右手を上げて
向かいの部屋をまっすぐに指差した。
「あり・おり・はべり・いまそかり。」
「あり・おり・はべり・いまそかり。」
「アーリオ・オーリオ・エ・
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