詩の日めくり 二〇一六年十二月一日─三十一日/田中宏輔
 

賢いひとの代わりのぼくといっしょに
レシートの隅を数字で埋めていく。
レシートは血に染まってびちゃびちゃだ。
カーペットの隅がめくれる。
ゆっくりと、めくれてくる。
スツール。
金属探知機。
だれかいる。
耳をすますと聞こえる。
だれの声だろう。
いつも聞こえる声だ。
カーペットの隅がめくれる。
ゆっくりと、めくれてくる。
幼いぼくは手で顔を覆って
目をつむる。
賢いひとの代わりのぼくは
その手を顔から引き剥がそうとする。
おにいちゃん
百円でいいから、ちょうだい。


二〇一六年十二月十四日 「ほんとにね。」

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