一九七八年のこと/板谷みきょう
経鼻カテーテルの挿入で
リハビリを続けたが
四肢の拘縮は進んで行った
アナタは病院に寝泊まりし
付添い続け夫と離婚し
三十路を過ぎてから
ホステスとして働き始めた
夜間は
家政婦協会から
紹介された付添婦に介護を頼み
帰って来てから
時折、いねむりしながら
息子の世話をする
頭のへこんで話のできない
手足が曲がったまま
鼻に管を入れられてる
歯並びのガタガタな我が子を
二時間おきに体交枕の位置を変え
床擦れを気にしながら
オムツを換える
すっかり化粧っ気も無くして
眉毛の無いままで
喫煙所で煙草をふかしながら
あの時
死んでくれていたらねぇ
深い溜息の後に
アナタは小さく呟いた
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