一九七八年のこと/板谷みきょう
あの時
死んでくれていたらねぇ
深い溜息の後に
小さく呟いたアナタは
あの時
命だけでも救って下さい
確かにそう言った
あれから六年の歳月が流れ
あの時三歳だったこの子も
本当なら元気に
小学校に通っていたはず
トラックにはねられ
意識不明で運ばれた時に
頭蓋骨は陥没し
脳漿が流れ出していた
検査の後、緊急手術になり
午後から深夜にかけて
執刀医が必要とする器械を
ボクは手渡し続けてたのだ
結局、この子の命は救えたが
植物状態となってしまった
脳浮腫や脳圧亢進予防に
頭骨の一部は外されたまま
点滴による静脈栄養と
経鼻
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