灰色の鬼/板谷みきょう
いに来た鬼を、退治したのですから…。
丘の上の栗の木と、野っ原の石ころだけが、本当のことを知っていました。灰色の鬼だって、人間の世界に行けば、殺されてしまうことぐらい、判っていたはずです。
栗の木は、ヒューヒューと泣きました。
道端に捨てられた鬼の死体に、蠅が飛び交っています。
自分の心に、正直に生きようとして殺された、鬼の死に顔は、安らかに、笑みをたたえたような、満足気な表情だったのでしょう。
いえいえ。
鬼の顔は、もし生きていたのなら、大声でえんえんと泣くような
そんな死に顔だったのであります。
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