ごく限られた世界の夜から昼への移動距離を並べて/ホロウ・シカエルボク
無くしているのか判断がつかなかった、でも家までの道も自分の名前も年齢もきちんと覚えていて生きていくには困らないのでもうそこにこだわるのはやめにした、人間の感覚なんて簡単に疑える、嘘だと思うなら一晩多目的トイレで過ごしてみればいい、家には難なく帰りつくことが出来た、歩いて一時間くらいのことなら昨夜のうちに帰ればよかったのだとふと頭に浮かんだけれど歩いてどれくらいかかるのかはっきりとはわからなかったとにかく濡鼠だった自分をどうにかしたくて断念したのだ、早速服を脱いで洗濯物の籠にぶちこみ浴室へ飛び込み長い時間をかけてシャワーを浴びて洗い身体をほぐした、それからインスタントコーヒーを入れて急ぎ気味に飲み干
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