急性淫/北井戸 あや子
さないで、その指から貰えばどんな嘘だって本当に出来るの」
息を止めて走るほど、わたしがわたしでなくなって
寂しさだけが速度を増して、撫でる、肺を、そっと、望んでもいないのに、朝がやってくる、夜を侮辱しながら
息を吐いて約束を吸い込んでそれでおわりにしたい、なにもかも
こんなにも遠くから
あなたの片鱗に
そっと伸ばした手
これは濃縮された殺意のうたであって、けっして勘違いしてはいけないよ、おまえ、わたしの成分はもうこの世に残っていないとしても
同じ言語を交わして、まじり会えない惑星で、ずっと迷子のままでいよう
記憶が言葉を飛ばして口をつぐんで遠ざかる、鬱。脆い輪廻に置き去りの水子。あなたに忘れられた、わたしが忘れたあなたの横顔をずっと見ている
知ってる、夢だって
急いで走馬灯を追い越そう、生き急ぐ影に覆われるまえに先端へと崩れて帰ろう
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