ナイフ/mayaco
 
小さなナイフを握りしめました

最初で最後のするどい傷跡が
宙を舞いました

柔らかな時間に何の罪もなく
優しい沈黙に何の悔いもなく

それでも気づくと
私はナイフを握りしめていました

白い花びらが
静かに舞い降りました

痛い優しさに傷ついて傷ついて

私は自分の優しさを失いました

白い花びらが軽やかに
私のほほをなでてゆきます

涙の代わりに流れた時間が
いつまでも泣いています



戻る   Point(1)