午後 山は飛び ひとりを歩み/木立 悟
白く白く濁る視界
羽に満ちた青空は
ずっと午後のままでいる
雨雪が緑の日
角を曲がる小さな舟
多足の影が空に映り
水を歩むまばらな陽
ふたつめの窓を透り抜け
風は少しだけ色を見せる
夜の上の夜の径
歩きつづける二重の影
目をあけていられないほど
まぶしい雨の朝とささやき
かつてぽつりと生まれたものが
歩み出すまでの長い長い時間
腰を脇を腕を手首を
何度も何度も
すぎては砕ける花を見る
抱いては砕ける花を見る
午後の街に消える舟
飛ぶ山の影の下
ちらばる花を拾い集める
金と緑の手に触れてゆく
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