詩の日めくり 二〇一六年十月一日─三十一日/田中宏輔
久しぶりに、吉田くんと話をしようとして冷凍室に行った」
吉田くんと話をしようとして冷凍室に行った
吉田くんとは一週間前ほど前に話をしたのだけれど
話の途中で少し待ってもらうことにしたのだ
むかしは電話というものがあって
すこしの間の沈黙が不快な感じを与えたものであるが
冷凍庫が普及するにつれて
みな沈黙する間
そこに自分が入るか
相手に入ってもらうかして
沈黙にお時間をやりすごすことにして
コミュニケーションが以前より円滑に行くようになったのである
冷凍庫から出てすぐには
頭がはたらかないので
コーヒーを二杯飲んでから話をすることにしている
吉田くんの前にコー
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