ボロ布のようなマリア/ホロウ・シカエルボク
 
上、俺に出来ることはないのだろう、ここから連れ出すことは、彼女にとっては幸せと言えないのかもしれない、けれど、ここに居るよりはずっといいかもしれない…「心配してくれて、ありがとう」マリアは最後に、少しだけ真面目な調子でそう言った、そして、眠いから寝るね、と言って駄菓子屋のほうへと走って行った、もしよかったらまた遊びに来てね、と言い残してー俺はそれから何度かマリアに会った、彼女はいつも同じ調子で迎えてくれた、そして、少しすると眠いからと言って駄菓子屋へと引っ込んで行った、そしてある夏の日、駄菓子屋の住居スペースで蝉のように死んでいた、黒い髪に包まれて、おそらく腐敗しているだろうそれは、一目では人間だとわからなかった、まるで、丸めて捨てられた毛足の長い絨毯のようだった。


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