生前供養/ただのみきや
 
二人の旅行

迷い込んだ蝶が鍵盤にとまった
ゆっくり開いて
ゆっくり閉じて
あなたは水へと変わり
音楽は彫像となって影を落とす
わたしは感覚と記憶
去るものと共に流れていった

家の外では夏の二人称が口を拭う
小指の骨を咥えた
とてもとても白い
       白痴の時間

棘のように
肉に埋もれた墓

狩り蜂たちの忙しない朝
柏の葉が光と影を天秤にかけて揺れていた
とおいとおい世界
       土偶の眼差し

始まりは定かではなく終わりは海
月に焦がれて鳴く真珠の声に
狂った心ふたつ 撚り合わせて
引き潮に降りた蝶
待ち伏せていた白骨を
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