サカガミ/ふるる
 
サカガミが猶予はないと言うのだった
彼はいつも唐突な喋り方をした
そして黙るので沈黙を料理しそこねた我々はつらい気持ちになるのだった

サカガミの母親は彼を随分と気に入っていて
息子なのにさんづけで呼んでいたが
あまり気にする者はいなかった
彼や彼女の事情は気にならなかったが
父親が不在なのはいかにも演じられた不在で
何故だか分からなかったのが困りものだった

サカガミの姉上とやらが遠路はるばる上京してきて
彼の悪口を散々言って帰った
我々はただ頷きながら聞いていたが
それしか話題がないからなのだと
誰がが呟いた

サカガミの気の毒さは我々の共通認識で
生まれつ
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