クリスマスプレゼント/板谷みきょう
 
た人たち一人一人に「ありがとう。」と言い
そして静かに目を瞑って、死が訪れるのを待ちました。

―――神さまがお迎えに参りました。

見守る人々の目に神さまの姿は見えません。
「町中を歩き回って探したようだが、誰の胸にも薔薇の花が無かったんだね。だからと云って、悲しむものでもありませんよ。」

神さまはおっしゃいました。

見守る人々の耳には、何も聞こえません。

けれど、おじいさんは、その声に、うっすらと目を開けたのでした。
それから、何にか呟き、涙を流し、静かに、そして安らかに、息を引き取りました。

見守る人々も、お医者さんも、おじいさんが何を呟いて、どうして涙を流し始めたのか、解りませんでした。

おじいさんを連れていく神さまの胸元に、大きな、本当に大きな、薔薇の花が有ったのです。

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