詩の日めくり 二〇一六年九月一日─三十一日/田中宏輔
 
台所で、鍋がぐつぐつと煮立っていた。
そして、だれもいなくなった玄関で、プツがプツプツと笑っていた。
そして、だれもいなくなった玄関で、靴がクツクツと笑っていた。
そして、だれもいなくなった会社で、課長がひとりで踊っていた。


二〇一六年九月十六日 「怨霊」


 きのう同僚の引っ越しがあって、手伝ったのだが、引っ越し先の床の上に悪魔の姿のシミがあって、そこに近づくと、鍵が置いてあった。家が山手にあって、洞窟までいくと、人食い鬼が現われて追いかけられたが、鬼の小型の者がでてきて、互いに争ったのだが、そこで場面が切り替わり、幼い男の子と女の子が玄関先で互いに咬みつき合っていた
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