誕生/葉leaf
 
人々のたどった道筋はそれぞれ雨の筋となって、地上に落ちその内なる血液を放って自裁した。数限りない豪雨を経て、そのたびに数限りない道筋が死んで、やがてたった一つの命が産まれた。君よ、君という一つの命が産まれるために、私は、私たちは、数限りない道筋を歩みそしてそれらの歩みを殺していった。それぞれの起伏とストーリーとメロディーがすべて消失した後の大きな空白に、君は厳かに産まれ落ちたのだ。

君からは大海が流れ出した。そしてこれからも君からはたくさんの回路が流れ出すだろう。初めて君にあいさつした人、初めて君に笑いかけた人、初めて君を抱き上げた人、そして君が産まれた病院、君が産まれた町、君が産まれた社会
[次のページ]
戻る   Point(0)