sonnet/朧月夜
空の上界を目指して烏がゆく。
空の上界の玉座には、極楽鳥の羽根が飾られていると言う。
烏はそれを一目目に入れてみたかった。
羽ばたいて、羽ばたいて、はるかな遠みまで来たと思った時、
烏はそこに何もないことを見出して呆然とした。
極楽鳥の羽根とは、どこにあったのか。
そもそも、空の上界の玉座などというものがあるのか。
自分はまだそれほどの高みにまで達していないのか。
烏は孤独に鳴き声を上げる。答える仲間たちはいない。
いつの間にか、一人きりになってしまっている自分。
自分が目指したものはこんなものではなかったのに……と。
烏は今日も空の上から地上を見下ろしては、嘆く。
自分の行きたかったところは、果たしてどこにあったのだろう。
自分がそこへと行く目的は、いったい何だったのだろう、と。
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