詩の日めくり 二〇一六年八月一日─三十一日/田中宏輔
る。
そして意識が朦朧としたときに
ときおり閃光のようなものが
その脳髄にきらめくことがあるようだ。
つねづね
意識は、意識そのものを知ることはできない、と。
なぜなら、袋の中身が、袋の外から袋を眺めることができないからであると
この胎の持ち主は考えていたのだけれど
いま床に就き、意識を失う瞬間に
このような考えが、この胎の持ち主の脳髄にひらめいたのである。
地球が丸いと知ったギリシア人がいたわ。
かのギリシア人は、はるか彼方の水平線の向こうから近づいてくる
船が、船の上の部分から徐々に姿を現わすのを見て、そう考えたのよ。
空の星の動きを見て、地
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