詩の日めくり 二〇一六年八月一日─三十一日/田中宏輔
語ることができない。
そして、わたしのいる場所が
ほんとうに、胎というものであるのかどうか確かめようもない。
そうして、そもそものところ
わたしが存在しているのかどうかさえ確かめようがないのだ。
そういえば、この胎の持ち主は、こんなことを考えたことがある。
意識とは、なにか?
それを意識が知ることはできない、と。
なぜなら、袋の中身が
袋の外から自分自身を眺めることができないからである、と。
しかし、この胎の持ち主は、ときおりこの考え方を自ら否定することがある。
袋の中身が、袋の外から自分自身を眺めることができないと考えることが
たんなる言葉で考えた
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