詩の日めくり 二〇一六年八月一日─三十一日/田中宏輔
二〇一六年八月一日 「胎児」
自分は姿を見せずにあらゆる生き物を知る、これぞ神の特権ではなかろうか? (ミシェル・トゥルニエ『メテオール(気象)』榊原晃三・南條郁子訳)
二〇一六年八月二日 「胎児」
神の手にこねられる粘土のように
わたしをこねくりまわしているのは、だれなのか?
いったい、わたしを胎のなかで
数十世紀にもわたって、こねくりまわしているのは、だれなのか?
また、胎のなかで
数十世紀にもわたって、こねくりまわされているわたしは、だれなのか?
それは、わからない。
わたしは、人間ではないのかもしれない。
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