適切な靴を履いて歩いている薄汚い夜の現象/ホロウ・シカエルボク
ねじられ、路肩の排水溝のそばに横たわった煙草の空箱が、人類はもう賢くなることはないのだと告げている、六月の夜は湿気のヴェールをまとって、レオス・カラックスの映画みたいな色をしている、そしてこの街に、ジュリエット・ビノシュなど居ないのだ…あえて言葉にして語ろうとするならそんな気分だった、そしてもうご存じの通り、それは言葉にするほどのものでもなかった、同じ夜、もの心ついたときから幾度となく繰り返してきた、同じ夜、同じ風景、俺は年端も行かぬうちから疲れ果てていて、ウンザリしていた、ウォホールの未整理のフィルムを延々と見せられているような気分だった、そしてそこにウォホールの目線など存在しやしないのだ…
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