嵐と晴天/ただのみきや
 
少女アデリーの失くした人形のために

暑い日にはアスファルトに足をとられてしまう
あえぐ憐れなペンギン
目標を喪失した花鋏
放置されたまま錆びて行く殺意
間の抜けた 横顔の
驚きではなく諦めの 棘

祈りの言葉で舌を噛む
老成した眼差しから 
  無意識にしたたり落ちる
          音楽的漏出

月のように何重にもぶれる像
微生物のように泳ぎ回り定着しないまま文字が
氷漬けの少女のからだを覆って行く
言葉の猿轡(さるぐつわ)
明け方に瑠璃色の甲虫が掌をこじ開けるまで

櫛の歯の隙間から
  肥えた生贄の太陽

   わたしはマグマの
[次のページ]
戻る   Point(6)