嵐と晴天/ただのみきや
少女アデリーの失くした人形のために
暑い日にはアスファルトに足をとられてしまう
あえぐ憐れなペンギン
目標を喪失した花鋏
放置されたまま錆びて行く殺意
間の抜けた 横顔の
驚きではなく諦めの 棘
祈りの言葉で舌を噛む
老成した眼差しから
無意識にしたたり落ちる
音楽的漏出
月のように何重にもぶれる像
微生物のように泳ぎ回り定着しないまま文字が
氷漬けの少女のからだを覆って行く
言葉の猿轡(さるぐつわ)
明け方に瑠璃色の甲虫が掌をこじ開けるまで
櫛の歯の隙間から
肥えた生贄の太陽
わたしはマグマの
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