夏とクジラの話/投稿者
 
彼女は言った。

「クジラは空を飛ぶ魚だよ」

その通りだと思った。



恋をしていたのか、と聞かれたら
そうだ、と答えるだろう

けれど、恋を引き算したところで
クジラは昔からずっと、空を飛んでいるのだから
魚にちがいなくて

彼女の声は分厚い空にとけて


 め

みたいに僕を包む

それがあまりに幸せで

世界に隠された真実
そのひとつを見つけたと思った



あのころ僕は
夏になればクジラが飛ぶんだと思っていた

本当はさかさまで
クジラが夏を運んで来たんだね

力いっぱい飛んで
空を泳いで

泳いで

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