広くて静かで誰もいない/コーリャ
 
墓石をゆくりなく照らしている。俺はしばらくして、手を伸ばして、触れた。涼しくて硬い。俺はそのままかがんで、花束を置いた。こんなことになんの意味があるんだろう。
「あなたが、こんなところに眠っているとはどうしても思えないんだ」
「人はあなたが死んだというよ。あなたがもう世界のどこにも、存在しないと」
「だけど、あなたは、俺のなかでいなくならない。あなたは、笑ったり、泣いたり、詰ったり、励ましたり、望んだりする。あなたの肉体は、砂になったり、海になったり、温度になった。それでもあなたはどうしても滅ばない」
「思い出が、俺の中にないように。世界が、俺の中にないように。あなたは、生きているんだ、俺
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