広くて静かで誰もいない/コーリャ
 
急行が過ぎ去る。人びとは一様に、同じ方向を向いて立ち、何かを待っている。ほどなく列車が来る。それに乗り込む。ずいぶんと空いている車両だが、俺は座らなかった。そのかわりに、窓際に立って、過ぎていく景色を、なんとなく眺めた。

終着の数駅手前で下車する。降りるものは俺だけだった。いつもここでは同じ匂いがしている。そしていつもここでは同じ季節だ。周りの風景もだいたい同じで、時そのものが保存されているように感じた。改札を抜ければ、迷うことのできないような構内で、外に出ると、バス停と、数台のタクシー。最初の車両のドライバーは、新聞紙を広げているが、その後のものには、誰にも乗っていない。日差しがすこし強
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