広くて静かで誰もいない/コーリャ
下ろす。俺もつられて上げて下ろす。店内のささやかな喧騒が聴こえている。
「今年も行くんだろう」
「そうだな、多分」
「あそこは、町から離れた、気持ちのいい場所だから」
彼は顔を背けたままで言った。
「そうだね」
外では人の川が絶えず流れている。それから、俺もずっとそれを見ていた。
花束を買ったあと、駅まで来て、大きな葉脈のようにかかげられた路線図を眺める。値段を確認して、切符を買う。子どもの頃はすぐに切符を失くした。今になっても、その頃のことがどことなく忘れられずに、ポケットに入れた切符を固く握っている。ホームに立って、街を眺める。ビルや家屋、その音や空。どこかへの急行
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