からからと回る風車/こたきひろし
 
子供の頃
隣家の製麺工場は水車が動力源だった
製麺工場は夫婦だけで営まれていた小さな工場

水は川から引かれていた
私の産まれ育った家は貧相で粗末な藁葺屋根の家だった
家の僅かな庭の前には細い道があった
その道の直ぐ先は土手になっていて、その先の堀りを水が流れていた
その水は隣家の水車を回していた。
堀の向こうは竹林になっていた
その竹林が切れる辺りに山肌に沿って川が流れていた

その川から泳いで来るのだろう
名前のわからない魚が堀の水に逆らって泳いでいたり、水の流れに乗って泳いだりしていた

土手には我が家ように水場まで下りる道筋があって
母親と父親はその道筋をお
[次のページ]
戻る   Point(5)