ユスリカ/
花形新次
誰もいない部屋の
片隅にある写真
女は若く
俺も若い
確かに1/4世紀過ぎたのだ
時間は相対的だというのが
本当ならば
俺の時間は長い
砂丘で作った巨大な砂時計
夭折した者たちを思う
若くして死んだ男や女は
濃縮された生が
彼らの時間を充足したのだ
たとえユスリカのように
短い生だったとしても
俺の時間は
長い訳ではないのかも知れない
ただ、生の密度が低いだけなのだ
写真立てを倒して
カーテンを開ける
今日も雨が降っている
すべて雨のせいだ
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