sonnet/朧月夜
あまりにも海に似すぎている。そう、似すぎている。
僕のこころは、だから、慰めを必要としない。
なぜなら、僕はさざ波のようになることもあるけれど、
冬の嵐の海のようになることもあるからだ。
セイレーンよ、セイレーンよ、
お前は今日も漁船を海に引きずり込むのか。
セイレーンよ、セイレーンよ。
その歌声でいったい誰を、犠牲者にしようというのか。
僕とセイレーンとは近しい、まるで従兄妹同士のように。
僕は誰かを犠牲にしようとは思わないが、孤独にも耐えられないのだ。
冬の嵐の海のなかに、ただ一人消えていくのが良いのだろう。
深い深い、海の底に沈んだ男たちは、愛する者を求め、
幽明の境界をただ彷徨うだろう、温もりを求めて。
すべては天が差配する。僕はただ、暗い海のようであるばかりだ。
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