早朝の散歩から/山人
。闇の中でフクロウの鳴き声がする。ほ、ほほう。遠慮しがちな声が闇にまとわりつく。朝鳥はまだ鳴くことはない。するとどこからかヨタカの声がする。きっと不思議な形相でヨタカはキョキョキョと鳴いているのだ。すでに二シーズン営業を休んだスキー場のロッヂ前の急な車道を早足で登る。歩幅を大きくして一気に登ってしまおう。平らな場所に着いた時にはずいぶんと息が上がっていた。あとはだらだら下る。田植えを前にしたそれぞれの田は田打ちを終え平らにならされている。冬、膨大な雪の下敷きになっていた田の土が攪乱されてにおい立っている。土というよりも泥の香だ。この誘いこむような泥濘に若苗を埋め込むことで、稲は新たな生息地を獲得す
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